奈良県の地酒『風の森』をご存知ですか。今、そのコストパフォーマンスの良さや、革新的なコンセプトのお酒を世に放つブランドとして、注目度急上昇中で、2018年の『日本酒注目度ランキング』ではついに5位にランクインしました!
1. 蔵の長い歴史と、始まったばかりの風の森
風の森は奈良県にある油長(ゆうちょう)酒造で造られています。この油長酒造、実はとても古くからの歴史があり、起源を遡れば江戸時代の慶長年間(1596年から1615年)から製油の会社として存在してきました。その後1719年にお酒を作り始めて以来、約300年間にわたって日本酒蔵として事業を行っています。
そんな老舗酒造メーカーの油長酒造とは対照的に、風の森ブランドは比較的最近の今から15年ほど前に生まれました。
2. 若い職人さんが、風の森を引っ張る
いまの風の森を支えているのは、若手の社員さんたち。
2010年ごろには、当主の山本さんの決断で、まだ当時入社2年目だった社員の松澤さんを杜氏に指名。そして同じく入社して5年目の高橋さんに、麹造りを任せたのだそうです。
松澤さんは大学で醸造学を学んだものの、まだ経験は浅く、一方で高橋さんはなんと商学部出身。二人ともほとんど経験のないところからのスタートでしたが、勉強熱心な松田さんとずば抜けた嗅覚を持っていたという高橋さんが就任後、みるみるうちに風の森は成長しました。なんと高橋さん、麹の香りを20種類以上嗅ぎ分けることができるのだそうです!
3. 製法上の強いこだわり!純米・無濾過生原酒
風の森には、製法上5つの特徴があります。
※日本酒の基本的な製法について詳しくは、『日本酒の作り方!全11工程でお米からお酒までを逆再生!』をごらんください。
- 純米のみ
- 無濾過のみ
- 生酒のみ
- 原酒のみ
- 炭酸入り
純米酒にこだわった日本酒作りをしています。奈良県産の「秋津穂(あきつほ)」「露葉風(つゆばかぜ)」「キヌヒカリ」と、「山田錦」「雄町」が酒米のメインです。奈良県の地元のお米を大切にしていることが伺えます。
無濾過のみ、つまり濾過していないお酒しか出さない点も、特徴。濁っているというわけではありません。もろみが発酵した後に酒の部分を搾り取ったり沈殿した澱を取り除いた後に、通常は炭素濾過という処理をするところを、このお酒ではしないということです。これは、炭素濾過をして炭素が旨味まで吸い取ってしまうことを避けるために行われているそうです。
生というのは、火入れをしていないということ。火入れをすると安定感は増しますが、やはり旨味を消してしまわないために生のまま出荷するのだそうです。
原酒、つまりお水を加えていない状態でしか出さないのも風の森の特徴です。これは、何かを加えてしまうと旨味が逃げてしまうという考え方から行われているのだそうです。
濾過や火入れを行わない風の森は、瓶の中で酵母が生きている状態になります。そして、その酵母は瓶の中でさらに発酵を続けるため、瓶内にガスが充満し、お酒にシュワっとした炭酸風味を加えるのです。
風の森のほぼ全ての銘柄(海外輸出ように作っているもの以外)が、このような縛りの中で生産されており、結果として特に「無濾過生原酒」ファンからの支持も高いようです。
4. 必殺!笊籬(いかき)採り!
風の森には、『笊籬(いかき)採り』という、季節限定のお酒があります。
この笊籬取りシリーズは、風の森独自の技術を使い、もろみからお酒を搾り取る時にかかる圧を最小限に抑えたお酒です。圧力を減らすことで、吟醸香や味のふくよかさをなるべく残すことができると言われています。
田酒などにある高級酒斗壜取(とびんとり)のお酒ように、吊るした袋から滴るお酒だけを集めるという従来の方法での無加圧絞りも可能ですが、その従来の方法だと雫が落ちる際に空気に触れるためにお酒が劣化してしまうという考えのもと、この新しい手法である笊籬取りが考案されたのだとか。なんと研究開発に7年かけているそうです。
具体的にどう絞られるかというと、もろみの中に竹で編んだザルのような形のフィルターを沈めるのだそうです。これをするともろみから清酒だけを取ることができるのだとか。ちなみに、笊籬とは竹で編んだザルのことを言います。
この貴重なお酒は、さらに1年間熟成されたのちに秋限定酒として発売されています。
5. 横文字銘柄ALPHAで、貪欲に実験中
風の森ALPHAシリーズのテーマは「従来の風の森の枠を越えて目標を定め、独創的な技術で日本酒の可能性を追求するブランド」と定義されています。テクノロジー系のスタートアップ(ベンチャー)の分野では、まだ世に出す前の試作機を「α版」と呼んだりしますが、似たような思いが込められているのかもしれません。要するに実験的なお酒です。
ALPHAシリーズは、その中でも3タイプあります。
- 『TYPE 1』はアルコールをあえて低めの14%に設定したシリーズ
- 『TYPE 2』は、秋津穂を大胆に22%まで削って作られています(あの『獺祭 二割三分』を超え、『梵 超吟』の20%に迫る勢いです)
- 『TYPE 3』は、世界の人に飲んでもらうために火入れ処理をして安定性を増したお酒です
こういった、ラボ的な取り組みも、「また風の森が何かやってくれるかもしれない」と、ファンを期待させる要因になるのでしょう。
参考:
kazenomori
NHKサキどり↑ – 「風の森」油長酒造: ハッピーお酒ブログ
注目度上昇中!!日本酒「風の森」の紹介 | ギャザリー
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