「清酒」とは何か?
それは、いわゆる日本酒のことなんです。日本酒の別の呼び方だと言えるでしょう。
そして、基本的には「日本酒」の方が広く使われています。例えばGoogle検索においては「日本酒」というキーワードでは毎月60,500回検索されているのに対し、「清酒」では4,500回しかありません。その差なんと13倍以上!
では「清酒」という言葉はいつ使われるのかというと、最もフォーマルな場面の中では法律で使われています。
「清酒」は、消費者のために法律で厳しく管理されている!
酒税法という法律の中では、「米、米こうじ、水を原料として発酵させてこしたもの(アルコール度が22度未満のもの)」のことを清酒だと定義しています。
ひとつ補足すると、アルコール度が22%を超える日本酒もあるにはあるため、これらは厳密には日本酒ではあるけれど清酒ではないということになります(法律上)
さて、日本において清酒は、この酒税法上で厳しく管理されています。
例えばラベルに表示する内容には、次に挙げるように大きく3つの指定があるんです。
なお以下の事項はすべて、2016年1月に国税庁のウェブサイトを確認しながらサイト管理人がわかりやすい言葉に変えてまとめたものです。詳しく・正確に知りたい方は、国税庁ウェブサイトの該当ページにてご確認ください
1. ボトルなどに記載しなければならないこと
次の10の項目に関する情報を、原則8ポイント以上の文字サイズで記載せねばなりません。
- 原材料名:『吟醸酒とは?純米酒とは?ややこしい”特定名称酒”を徹底解説!』で説明した特定名称酒のお酒については、精米歩合も合わせて記載しなければなりません
- 製造時期:製造年と製造月が記載されなければなりません。また、製造時期が不明の輸入酒には輸入年月を記載します
- 保存又は飲用上の注意事項:生酒や生貯蔵酒のようなお酒には保存上の注意を記載しなければなりません
- 原産国名:輸入したお酒の場合のみ記載します
- 外国産清酒を使用したものの表示:生産過程で外国のお酒を使用した場合、その旨記載するとともに、その使用割合を10%の幅で記載しなければなりません
- 製造者の氏名又は名称
- 製造場の所在地
- 容器の容量
- 清酒:「日本酒」と表示してもよいことになっています
- アルコール分
結構厳しく指定されていますよね。
実際に手元にあった『獺祭』のボトルを見てみましょう。
まず正面向かって右側に「原材料名」「精米歩合」「製造時期」「清酒」「アルコール分」が記載されています。
そして向かって左側に「製造者の氏名又は名称」「製造場の所在地」「容器の容量」が記載されています。
生酒ではないので「保存又は飲用上の注意事項」については記載がないです(まあ「お酒は20歳になってから。」も引用上の注意事項ですが)
また、輸入酒でもないので(正確に言うと、このお酒を私はカナダで購入したので、輸出酒ですね)、上記したリストのうち「原産国名」と「外国産清酒を使用したものの表示」についても記載がありません。
2. ボトルなどに記載してもいいこと
次に、ボトルに記載してもいいことは次の10項目です。
- 原料米の品種名:表示したいお米を50%以上使用している場合にのみ、使用率と併せて記載できます
- 清酒の産地名:使用されている原材料の全てが同一の産地のみで作られたものの場合に表示できます
- 貯蔵年数:1年以上貯蔵した清酒に、1年未満の端数を切り捨てた年数を表示できます
- 原酒:基本的には、加水処理をしていない場合のみに表示できます
- 生酒:火入れの処理をしていない清酒のみに表示できます
- 生貯蔵酒:製成後にすぐに火入れをせず、出荷の際のみに加熱処理した清酒に表示できます
- 生一本:一箇所の蔵のみで醸造した純米酒に表示できます
- 樽酒:貯蔵時に木製の樽で貯蔵された清酒にのみ表示できます
- 「極上」、「優良」、「高級」等品質が優れている印象を与える用語:自社の他の同一銘柄と比べ、客観的にその優位性が判断できる場合にのみ表示できます
- 受賞の記述:国や地方公共団体などの公的な機関から受賞した際に、そのことを表示できます
ここまでが「記載してもいいこと」です。
消費者はあまり知りませんが、商品の表示ってかなりこと細かく決められているんですね。これ以外には書けないだなんて厳しい!
3. ボトルなどに記載してはならないこと
最後に、記載してはいけない3つのことをまとめましょう。
- 清酒の製法、品質等が業界において「最高」、「第一」、「代表」等最上級を意味する用語
- 官公庁御用達又はこれに類似する用語
- 特定名称酒以外の清酒について特定名称に類似する用語
「自社内との比較」で、かつその言葉に「最上」の意味が含まれなければセーフで、「他社製品との比較」だったり「最上」の意味が含まれているとアウトということみたいです。
よくヨーロッパに行くと「王室御用達」というラベルの製品が(たくさん)あったりしますが、これに近い意味で「官公庁御用達」はダメなんですね。
例えば、米と水のみを使って出来たお酒ではないのにもかかわらず、ラベルに「米だけの酒」と記載するのがいけないということだそうです。ただし、文字サイズ8ポイント以上(消費者にも明確に読めるサイズ)で「純米酒ではありません」というような表記があれば良いのだそうです(明らかに不審ですけどね苦笑)
最近、日本酒のボトルもかなりバリエーションが豊かになっていて、ワインを意識したものとか、いわゆる女性向けデザインとか、ラベルがキラキラするのとか、逆に和紙に筆文字だけの渋いやつとか、まあとにかくたくさんありますが、市販の清酒は全てこの要件をクリアしているということですね。
日本酒を作る蔵元さんたちの、日本酒以外にかける努力も本当に頭がさがるなあと思います(もちろん、他の様々な商品にこのような要件があるのですが、普段意識しないことなので改めて感動したという意味で)
「清酒」とは「清いお酒」のこと!製法からその意味を考える
法律のお話が長くなりましたが、もう一つ清酒に関して説明することがあるとすれば、それは「清いお酒」と書いて「清酒」になる、その製法上の成り立ちでしょう。
『日本酒の作り方!全11工程でお米からお酒までを逆再生!』のページで説明しましたが、日本酒は次のような工程を踏んで完成します。
- 精米:お米(玄米)を磨き、白い中心だけにする
- 洗米・浸漬:お米を洗い、水に漬ける
- 蒸米:お米を蒸す
- 製麴:お米に麹菌をまぶし、麹を作る
- 仕込み:麹、酵母、蒸米、水を混ぜ、お米をアルコール発酵させる
- 上槽:発酵してドロドロになったお米(もろみ)を絞り、液体を抽出する
- おり引き:液体を寝かせ、底に溜まった澱(おり)飲みを取り除く
- 濾過:炭素やフィルターを使って、お酒をさらに濾過する
- 火入れ:お酒を60度〜65度に熱する。酵母の働きを止める役割と、殺菌の役割がある
- 貯蔵:貯蔵し、出荷を待つ
- 瓶詰め:瓶に詰め、出荷される
上から見ていくと、日本酒の元となるお米はまず初めに「上槽」のステップでドロドロの固形から液状になることがわかると思います。ただしこの状態では、まだお酒は白く濁ったまま。
そこからさらに「おり引き」や「濾過」を経た上で、日本酒の素はにごりを失い、だんだん澄んだ透明色なお酒になっていきます。
こうしてお酒が清く(「清い」とは澄んで濁り・曇りがないこと)なっていくのです。
清酒と対比できるのが「にごり酒」や「どぶろく」です。
『にごり酒とは、アレをしていない日本酒のこと!高い栄養価と飲みやすさが人気の秘訣!』では、「上槽」時に絞りを荒くして、澱を残したままにするのが「にごり酒」だと説明しました。
そして、そもそも「上槽」を行わないまま、どろっとした状態で飲むのが「どぶろく」です。
歴史を辿ると、もともと日本ではどぶろくを各家庭で作って飲んでいたような時代があります。その頃の人からしたら、透き通ったお酒は「清酒」で、透き通っていないのは「どぶろく」というように区別していたのかなと思います。
参考:
「清酒の製法品質表示基準」の概要|酒類の表示|国税庁
保税地域 – Wikipedia
日本酒の違い~初心者向け~ – 日本酒の違いをわかりやすく解説。純米とは?吟醸とは?
清い 意味 – Google 検索
[…] なお、にごり酒は、間違っても「漉していないお酒」ではないです。なぜなら、法律上日本酒(清酒)は「米を発酵させて漉したお酒(意訳)」だと決められているからです。この辺りに関して詳しくは『「日本酒」と「清酒」って何が違うの?』をごらんください。 […]
「原材料名 米(国産)、米麹(国産米)」と表示されている新潟清酒と、「新潟県産米100%使用 原材料名 米 米こうじ」と表示されている新潟清酒の差異がよくわかりません。前者は、米の産地が新潟県以外(一部新潟県も含まれる)ということなのでしょうか?
推測でしかわかりませんが、恐らくおっしゃる通り、前者には新潟県産米意外の材料が使用されている可能性もあるということではないでしょうか?はっきりとした回答ができなくてすみません。
ご回答、誠にありがとうございます。Leo様ご回答の通りでした。酒造メーカーにも確認しましたが、国産米とあるのは、新潟産米以外の米も利用しているようです。新潟県産米100%としているのは、販売戦略があるのかもしれません。国産米としているのは各酒造メーカーの事情があるようです。新潟県産米とそれ以外の割合は当然ですが、年によりばらつきがあるのも分かりました。