福井県の黒龍酒造さんが造る地酒『黒龍』と『九頭龍』をご存知ですか?日本酒ファンの方々であればほぼ間違いなくご存知でしょうし、これから日本酒を始めるという方は覚えておきましょう。2018年の『日本酒注目度ランキング』では10位になりました。

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1975年、全国でいち早く大吟醸酒を商用に販売し始めたのが、黒龍酒造だったと言われています。『龍』と名付けられたその大吟醸は、高品質かつ少量生産品だったために、当時「日本一高価な日本酒」として注目されたそうです。

今回は、そんな黒龍酒造さんから、経営企画部の前田さんにメールとSkypeにてお話を伺えましたので、そのお話を元にして黒龍酒造をご紹介します!

素材へのこだわりがスゴイ

黒龍酒造のお酒『黒龍』と『九頭龍』には、福井県に流れる「九頭竜川」の伏流水が利用されているそうです。

この九頭竜川には、霊峰「白山山系」からの水が流れ込んでいます。

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白山は、福井県と石川県、岐阜県、富山県の4県にまたがる大きな山。その豊かな自然環境は、ユネスコの生物圏保存地域に指定されるほどの場所なんです。ここに降った雪解けの水が、長い年月をかけて濾過されて川の水となり、酒造りに利用されます。

・・・なんだか聞くだけで清らかな気持ちになれそう!

そんな特上のお水とともに黒龍酒造のお酒の味を生み出しているのは、酒造りに適した酒造好適米です。

兵庫県産の山田錦と、福井県産の五百万石を蔵内の平均精米歩合約53〜54%というレベルまでに磨き込んだものが黒龍・九頭龍の主な材料になっています。

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黒龍は「真味只是淡(しんみただこれたんなり)」を目指す

黒龍酒造が目指す酒の味を表現するのに、「真味只是淡」(しんみただこれたんなり)という言葉があります。

恥ずかしながら、「真味只是淡」という言葉を、僕は今回前田さんに教えていただいて初めて聞きました。

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これは、中国の古典のひとつ「菜根譚(さいこんたん)」というものに記されている言葉だそうで、「濃厚な味よりも淡い味のほうが、食材や料理を引き立てることができる良い味である」という意味があるんです。

食材や料理、つまりお酒と一緒にいただくものを引き立てることを目指したお酒造りをしているんですね!

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消費者のもとに届く過程にもこだわる

当蔵では清酒販売における専門的なサービスの提供と商品の品質管理の面から、インターネット通販ではなく、お近くの黒龍酒造特約酒販店での対面販売によるお求めをお奨めいたしております。整った冷蔵設備と確かな知識と経験をもった清酒販売のプロショップだからこそ、私たちのパートナーとして、米、水、そして酒造りに込められた蔵元、蔵人の思いを、お客様にお伝え頂けることと信頼しているからなのです。

引用:黒龍酒造株式会社 | 販売について … インターネット通販等

本サイト『うまさけ』を運営しながら、色んな蔵の情報をリサーチしてきましたが、その中でも特にお酒が消費者の元に届くプロセスを大切にしているなと感じたのが黒龍酒造さんでした。

上に引用したウェブサイトの一文にも記載されているとおり、「インターネットでの購入をお奨めしない」という、ある意味で時代に逆行するかのような潔い流通方法へのこだわりを示されています。

「信頼のおける設備や人を通してしか販売したくない」ということですね。確かにインターネット販売は、利便性の面では店舗販売に大きく勝りますが、流通過程などがブラックボックス化する部分もありますからね。

というわけで、当サイトでも黒龍さんのオンラインの販売店はご紹介しませんが、近くで買えるお店がないか探したいという方がいらっしゃれば黒龍酒造さんまで直接お問い合わせしてみてくださいね!

黒龍酒造株式会社
電話番号:0776-61-6110
メール:info@kokuryu.co.jp

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ワインカルチャーに影響を受けた黒龍の日本酒造り

黒龍酒造がお酒の提供方法にまでこだわるのは、同じ醸造酒であるワインが、世界中で愛飲されている要因のひとつに「お酒を楽しむ」という事を確立できているからだと感じたためです。

黒龍さんの日本酒造りは、ワインカルチャーの影響を受けていると感じるところがあります。

前田さんいわく、ワインカルチャーの周りに根付く「お酒を楽しむ」という習慣に日本酒も習い、「日本酒を楽しむ文化」を育てていかなければならないと、黒龍酒造さんでは考えていらっしゃるそうです。

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そもそも、現会長である7代目の蔵元が、フランスで学んだワインの熟成を日本酒に応用し、昭和50年に発売したのが、冒頭でご紹介した大吟醸『龍』です。

素材や料理を活かすために、低温でじっくり熟成させることを意識したこの大吟醸酒は、実はワインづくりからの影響を受けているんですって!

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日本酒カルチャーを広める「O杯を一杯に」プロジェクト

日本酒を飲んだことの無い方々に、日本酒の魅力や楽しみ方を知っていただくため、新しいアプローチによる様々な事業を展開しております。

「O杯を一杯に」という興味深いプロジェクトについて、聞いたことがありますか?

これは、黒龍酒造さんが所属する「和醸和楽」という団体によって行われているプロジェクト。手造りにこだわる全国の酒蔵と、こだわりを持つ日本酒専門店で結成されたこの団体では、日本酒を飲んだことが無い人に、日本酒の魅力や楽しみ方を提案しているのだそうです。

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例えば、このプロジェクトに関連して黒龍酒造さんは「燗たのし」という製品をプロデュースしています。

忙しい飲食店では、熱燗を提供する際に電子レンジでチンして提供するところもあります。しかしそれでは、程よい熱さでの熱燗の提供ができません。つまり、最もおいしい状態でお酒が提供されていないということです。家庭でも、めんどくさいのでレンジでチンしてしまう方は少なくないでしょう。

その問題点を解消するのが「燗たのし」です。お湯を「燗たのし」に注ぎ、徳利を入れて蓋をして待つだけで適温に温まるという優れものです。塗りがされた箱のデザインも美しく、出されたお客さんも嬉しいでしょう。

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あるいは、まだ日本酒から距離のある人が黒龍を楽しめるようにと考えられたのが、150㎖入りで400円の値段を実現した『黒龍 吟のとびら』です。甘みがあり、軽めのお酒に仕立てられ、ビギナーにとって嬉しいサイズとなっています。

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その他にも、外食時にもっと気軽に日本酒を飲んでもらおうという取り組みのひとつとして『酒グラス』があります。

飲食店で目にする日本酒って、ビールより高いじゃないですか。それが通常180㎖の徳利で出てくるわけです。ビール党の人たちよりも高い金額の日本酒を自分だけオーダーすると、ちょっとした罪悪感を感じちゃう人も少なくありませんよね。でも、そんな理由で日本酒を飲んでもらえないのは勿体無い!

この酒グラスには90㎖と120㎖のところに目盛りが付いていて、飲食店が日本酒を少量で提供しやすくなっています。お店が量を調節して、価格を抑えることもできるようにと工夫されているんです。公式サイトに記載された「「黒龍 酒グラス」にほどよく注がれた1杯が500円以内ならばいかがか」という提案に、少量で色々と飲みたい私は深く賛同しました!

これらの取り組みは、もっと多くの日本酒初心者に、気軽に日本酒を飲んでもらうためもの。特に日本酒に慣れていない人ほど、その味だけでなく、すべての体験を通して日本酒の印象を作り上げていくものですから、これらの取り組みがいつか身を結んで欲しいと思います!

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黒龍担当者さんお気に入りの一杯

最後に、前田さんにお気に入りの一杯を聞いてみました。

私が最も気に入っている商品は「九頭龍 純米」です。2015年4月に発売した新商品で、黒龍酒造が造る初めての純米酒になります。キレのある軽快な飲み心地と、さっぱりとした旨みはとても飲みやすく、普段から日本酒をご愛飲の方はもちろん、若い方にもおすすめ出来る味わいです。黒龍酒造の味筋をしっかり受け継いでいる純米酒だと思います。

選んでいただいたのは、黒龍酒造さんの「九頭龍 純米」でした!

夏には冷やして、冬には温めて飲むといった感じで、季節に合わせた楽しみ方が出来ることも、このお酒のポイントだそうです。

特に、はじめて挑戦する黒龍酒造さんの銘柄セレクトに迷われているっていう方がいらっしゃれば、試してみてはいかが!?

編集部後記

事前に黒龍酒造さんについてリサーチしていたときから、製造だけじゃなくて提供する瞬間にまでこだわる蔵なんだなあということをひしひしと感じ取っていた僕ですが、実際に話しを伺ってみてその想いは更に強まりました。

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ほかの人気日本酒と同様、そのこだわり故に生産量が需要に追いついていない面もあるようで、なかなか全国の方が一様に黒龍酒造さんのお酒を手に入れる事ができるというわけにはいかないかもしれませんが、もしお店などで見かけたら試してみてください。

なお、黒龍酒造蔵元の水野さんからは、次のような想いを伺っています。

世界中の方々に、日本酒の魅力を楽しんでいただきたい。そして、日本酒を飲んで頂いたお客様に、「その土地の風土や食、人、そして造り手のこだわりを感じたい」とその地を訪れて頂けるような、感動をお届けできる酒蔵のひとつになりたいと思っております。

本当、世界中の方々に飲んでもらえたら良いなと思いつつ、まずは僕が住んでいるカナダでの流通を是非お願いしたい!

そんな超個人的な願いで、このページを締めたいと思います!!!!