株式会社フルネットが発行する『地酒人気銘柄ランキング2015〜2016』にて、大吟醸部門5位、吟醸部門6位にランクインする、吟醸にめっぽう強い山形県のお酒があります。

出羽桜です。

このページでは、様々な資料で独自に研究した情報に加え、バンクーバーにてお会いした出羽桜酒造の鴨田さんへの取材を元に、出羽桜の魅力についてご紹介していきます!

出羽桜は、出羽の里純米が旨かった!

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出羽桜はいくつか飲んだことがあるんですけど、バンクーバーで開催した日本酒テイスティングイベントで飲んだ、出羽の里を酒米に使った純米酒はとても美味しくて、参加者の方も美味しい美味しいとおっしゃっていました(いきなり吟醸酒じゃないんかい!という感じですが、美味しかったんで最初に紹介します)

純米らしく米の深い味わいがあって、口に含んだ時に微かに甘さも感じて、明らかに良いお酒だってわかります。これは私だけの感じ方じゃなくて、イベントに参加した他の方、特に外国人の方にもその違いは一目瞭然でわかったみたいでした。

私の場合、あんまりこってりした吟醸酒が好きではないので、このくらいのほうが合っているのかもしれません(以前飲んだ缶入りの吟醸酒の方は、ちょっと自分には重かったです)

『出羽桜 純米 出羽の里』おすすめです!

ではここからは、出羽桜を飲むにあたって知っておくとよりお酒が美味しくなる情報をまとめます!

1. 『出羽桜』という、名前の由来

出羽桜は1892年に創業され、以来120年以上にわたって山形県でお酒を作ってきた酒蔵です。

出羽桜の「出羽」とは、かつて山形県と秋田県(のほとんど)をあわせた領土を誇っていた国の地名です。「出羽国(でわのくに)」と言い、712年に誕生してから江戸時代の終わりまで、ずっとこの地にあった縁ある名前です。

そして「桜」とは、出羽桜酒造が蔵を構える山形県天童市にある舞鶴山の美しい桜から取られたものです。つまり「出羽(の山に咲く美しい)桜」→「出羽桜」ということでこの名前になったのでしょう。

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2. 出羽桜酒造 5つのポリシー

さて、出羽桜酒造には5つのポリシーがあるそうです。

  1. 地元でしっかりとした市民権と存在感のある酒
  2. これがつまり、地元出身の人が、地元出身の材料(米・水)を使って手がけたお酒を、地元の人に飲んでもらうことが基本だとする、出羽桜の最も基本的なポリシーです。「出羽桜」という名前そのものが、山形のこの地域への強い思い入れを表していますね。

    お米に関しては、出羽燦々という独自のお米を開発して使用されています(その他のお米を使用したお酒もあります)実は山形を含む東北で採れるお米というのは、関西で収穫される山田錦や雄町のような、粒が大きくて柔らかいお米と比べると、粒が小さくて固くなりがちです。

    しかし、出羽桜酒造さんには「地元のお米が地元のお酒を造る」という考えがあるため、山形で作ってもなるべく柔らかいお米になるようにと、出羽燦々を作られたのだそうです。

  3. 圧倒的大差のある分かりやすい品質
  4. 鑑評会の審査員とか、日本酒の玄人とか、そういう方だけがわかるお酒では意味がないというのも彼らのポリシー。普通の人が普通に美味しいと思えるお酒を作ることにこだわっているそうです。

  5. 一般的なお客様の手の届く価格設定
  6. 出羽桜ではこの「一般的なお客様の手の届く価格設定」というポリシーに基づき、パッケージにお金をかけて原価を上げるくらいであれば、その分を価格を抑えるという方針の努力をされているそうです。

  7. 他の酒の犠牲の上に立った吟醸酒でないこと
  8. 吟醸酒にこだわり、吟醸酒の割合が70%という出羽桜ですが、一方で高級酒だけでなく、普通の人が普段飲むお酒にも手を抜いてはいけないという思いを込めているのが「他の酒の犠牲の上に立った吟醸酒でないこと」というポリシーです。

  9. 利益の社会還元
  10. 最初のポリシーとも関わりますが、出羽桜は利益を地域や社会に還元するために、山形県の地元に「出羽桜美術館」と「斎藤真一心の美術館」というふたつの美術館を運営し、李朝の陶磁工芸品や斎藤一心の絵画等を所蔵・展示しています。

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3. 出羽桜の酒造りの秘密

出羽桜酒造さんの資料によると、出羽桜では平均精米歩合が52%(ほぼ半分削っている)だそう。一度に100俵分の精米が出来る3台の精米機で一斉に丁寧に精米を行っているそうです。

こしきという昔ながらの蒸し器をつかってお米を蒸したあとは、地元の蔵人さんたちによる2日間に渡る麹づくりです。そして「手もと」というこちらも昔ながらの手法で酒母を作り、酵母を育てていきます。

絞りは、横からの機械の圧力でお酒を絞り出す「ヤブタ式」と、上からじっくり圧力をかけて絞っていく「槽搾り」と、重力に任せて優しく絞る「袋吊り」の三種類を使い分けているそうです。

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出羽桜の全ての火入れの吟醸酒は、火入れを一度しかしない生貯蔵酒。-5度で最大9000石( = 1,620,000リットル)を貯蔵できる設備があるそうです。

生貯蔵にこだわる理由について出羽桜酒造の鴨田さんは、出羽桜の香りと味を保ち、フレッシュ感をなるべくそのまま出したいからだとおっしゃっていました。ただ、ここまではどの蔵でも思うこと。でも、フレッシュな味を安定的に保つのが難しいんですよね。

出羽桜酒造さんの場合、生貯蔵をしながら品質をキープし、生ひねを起こさないようにするために、出来たお酒を脱酸素状態の-5度で保存し、瓶詰め後に1度だけ火入れを行うという手法を取っているそうです。これが高度な技術で、他にやっている蔵はないのではないか?とおっしゃっていました。

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4. 出羽桜以外にも銘酒が揃う、山形県の旨いお酒

山形県には、美味しいとされるお酒がたくさんあります。例えば常にプレミアでなかなか手に入らない『十四代』や、平均精米歩合の低い『くどき上手』や、クリーンで飲みやすい『楯野川』なんかも山形県です。

この理由のひとつがお酒を造るための資源の充実です。鳥海山や月山、白鷹山といった有名な山から流れる、質の高い水があります。お酒を造るのに大切な酒米ですが、山形には『出羽燦々』や『酒未来』『龍の落とし子』などなど、クオリティの高いオリジナル米があります。

また酒造同士の研究も盛んで、山形県研醸会という組織では、酵母や酒米について蔵を超えて研究を進めているのだそうです。

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それからもうひとつ鴨田さんに伺った仮説でもの凄く納得したことがあります。通常、お酒造りのプロである杜氏さんというのは、農業のシーズンのときには自分の田んぼで農業をし、シーズンオフになると県内・県外に出稼ぎに行って杜氏としてお酒を造るというようなことをしてきたわけですが、山形の杜氏さんはほとんど県外まで出ないんだそうです。

その仮設として鴨田さんに教えていただいたのが、山形は6月のさくらんぼから始まり、ぶどうやもも、梨、ふじりんごまで様々な果物の収穫が続くため、よその県に出ていく暇がないんじゃないかというお話なんです。これには納得。山形県のお酒のレベルが高いという話と、必ずしも直結するわけではありませんが、山形県の中で育ってきた独自のお酒カルチャーというものがきっとあるのだと私は想像します。

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出羽桜 のウマイ日本酒

最後に、いくつか出羽桜の日本酒をご紹介していきます。

出羽桜 桜花(火入)

まずはかつて、この出羽桜の人気を全国に知らしめたお酒『出羽桜 桜花(火入)』を紹介します。精米歩合50%、日本酒度「+5」の辛口のお酒で、山形県産のお米を使って作られています。

私も、何度かいただいた経験がありますが、立香はリンゴジュースのように香り、飲み口は甘く、しかしくどいような甘さではないため、非常に飲みやすいお酒という印象でした。きっと日本酒にあまり慣れていない方でも飲めるお酒なんじゃないかと思います。

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出羽桜 大吟醸

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出羽桜の大吟醸というお酒もあります。これは、2016年の全米日本酒歓評会でグランプリを獲得したお酒です。

個人的な感想としては、香りが素晴らしく、味はやや後を引く感じで、冷やしていただくととても美味しいお酒だと感じました。

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出羽桜 純米大吟醸 一路

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色々飲んだ出羽桜の中で、最も香るけれど、あまり重さを感じなくて、軽くて飲みやすいと感じたお酒でした。香りから続く甘さは大分後までのこり、でもそれが軽やかなので初心者にもオススメ出来ます。

山田錦を使い、精米歩合は45%。材料に素直なお酒という印象で、私は好きです。インターナショナル・ワイン・チャレンジのSAKE部門にて、最高賞の「チャンピオン・サケ」に選ばれたお酒です。

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出羽桜 雪漫々 氷点下五年熟成酒

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こちらは古酒です。私の好みは「スッキリの中に旨味がある日本酒」か、もしくは「ウィスキーのようにスモーキーなクセのある日本酒」なので、このお酒は一度お目にかかりたいと思っていたお酒でした。

氷点下で5年間、じっくり熟成させてから世に出るお酒。どんなものだろうかと香りをかいでみると、意外と甘い香りがします。びっくりしました。実際に飲んでみると、やはり少し甘くて、ツンツンせずにまろやかです。古酒としては意外な味でしたが、このなめらかな舌触りはやはり古酒ならでわなんだと思います。

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出羽桜 咲

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最後はスパークリングの『咲』です。アルコール度9度で炭酸が飲みやすい、日本酒をほとんど飲んだことがない方や海外の方にも導入として飲んでいただきやすいお酒です。

非常に軽くて飲みやすく、ピリピリする感触が楽しい、そして酸味も感じるので、カクテルとかサワーが好きな方にもおすすめできるひと品。

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まとめ

出羽桜は、2017年9月現在、25カ国50都市で販売中です。他の国で飲んでもらうと、その反応は、「なんだこれ、香りが違う。なんか混ぜたの?」とさえ言われるそうです。

鴨田さんに、出羽桜と合う洋食をうかがった所、洋食だとオイスターと合うとおっしゃっていました。生原酒とかの強さのある酒や、ドライなお酒と特に合うのだそうです。

出羽桜のお酒でいうと『出羽燦々 生原酒』や『泉十段』といったお酒が合うそうなので、ぜひ飲んでみたいと感じました!

参考:
出羽国 – Wikipedia
酒造り 原料処理 – 出羽桜酒造株式会社
ポリシー – 出羽桜酒造株式会社
甑 – Wikipedia