「日本酒を海外で売ろう!」という動きは、ここ数年常に注目されて来ました。

大手の酒蔵はいち早く動き、現地に酒蔵の建設を進めていますし、中小の酒蔵は海外の酒蔵や輸入業者と提携して地道に販売を進めています。

ところで海外といっても、中国や韓国とその他のアジア諸国、欧州、そして北米ではそれぞれ状況が違います。アルコールに対する認識は各国での違いが鮮明で、それに伴い法律や税金なども全く異なるため、日本酒の海外展開が短期間で一気に進まない現状には理解ができます。

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さて、北米の中でもアジア人が多い都市・バンクーバーでは、2016年から毎年日本酒のアニュアルイベント『Sake Fast』が開催されています。

今回は、その『Sake Fast』に参加して来ましたので、現地からその様子をレポートします。

バンクーバーの日本酒事情

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Sake Fest が開催されたのは、2018年9月27日(木)。例年と同じく、IMPERIAL(インペリアル)というお洒落な雰囲気の会場で開催されました。

イベントはまず、昼間にレストランやメディアを集めたB2Bイベントが開催され、日本酒に関する説明やテイスティングが実施されます。そして夜の部が個人向けで、こちらには現地の日本酒好きの方々が来場します。

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このイベントを主催しているのが、SABC(Sake Association British Columbia)という組織です。日本語で言えば、「BC州日本酒組合」といったところでしょうか。ちなみに、BC州というのはカナダのバンクーバーが所属する州のことです。

もしバンクーバー進出に興味のある日本酒関係者の方がこのページを見ていましたら、一度SABCにご連絡されることをお勧めします(もしくは、当サイトに日本語でご連絡くださいましたらお繋ぎできると思います)

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現在、バンクーバでは酒蔵さんがふたつ、インポーターさんが約10社くらい、この組織に所属して活動されていらっしゃいます。バンクーバーの酒蔵さんのことは、以前本サイトでもご紹介しましたので、興味がある方は記事をご覧ください。

レストラン・リカーストア向けのレクチャー

今回僕は、昼の部に開催されたビジネスユーザー向けのレクチャーから参加させていただきました。

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このレクチャーに来場していたのは、基本的に現地のレストランでお酒を担当している方や、リカーストアで仕入れを担当されていらっしゃる人たちです。

そして、ただお酒を飲み比べるだけでなく、先生がいろいろな飲み方を教えてくれます。

例えば、フードペアリング。A、Bふたつのお酒にメロン(甘)、レモン(酸)、ペパロニ(辛)、プレッツェルのお菓子(塩)、海苔(うまみ)をペアリングして飲んでみて、A、Bそれぞれのお酒とどのフードの相性がいいのかを試してみました。

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あるいはグラスの違いによる、同じお酒の味の違い。ワイングラスで飲む場合とおちょこで飲む場合とでは、全く同じ日本酒を飲んでも感じ方が異なります。

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同じお酒を冷酒で飲む場合と熱燗で飲む場合とでの比較もしました。

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また、こういったテイスティングだけでなく、現場でどのように日本酒を販売すべきかという点に主眼を置いたレクチャーもありました。

日本酒のプロモーションの仕方、お店での日本酒の管理の仕方などにも言及があり、この辺りはビジネスユーザーを対象にしたセッションらしかったです。

日本のように、居酒屋を数店舗回ればなんとなく売り方がわかる環境とは違い、こちらだとロールモデルが圧倒的に少ないので、こうした地道な啓蒙が必要になりますね。

午後〜夜のテイスティング

レクチャーが終わると、すぐにテイスティングが始まりました。

テイスティングの様子は例年と変わりません。インポーターさんや酒蔵さんが合計100種類以上の日本酒を並べ、参加者はグラスを手に持ち、少しずつ試していきます。

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今年僕が参加したのがビジネスユーザー向けの時間帯だったこともあり、消費者以上に本気の品定めをしている感じがしました。

例えば、僕の前に並んでいた何処かのお店の人は、色々インポーターさんの説明を聞いたあと「大吟醸と、純米をテイスティングさせて」っていう感じで、(もちろん英語で)さらっと試したいお酒を指定していました。

わかりやすい単語とはいえ「大吟醸」なんていう専門用語を意図して使って、あれがこうだこれがどうだとそのあとに議論を交わしていた様子は、通な感じがしました。

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カナダでの日本酒

バンクーバーでの日本酒熱は、毎年ジワジワと高まっているように感じます。

今回のイベントにしても、チケットは1週間前に完売だったそうです。また、本格的な日本料理店が毎年増えていて、そういったお店での日本酒提供も増えています。

日本料理店以外でも日本酒が提供されているそうです。僕はあまり行く機会に恵まれていませんが。

海外での日本酒展開というのは容易なことではないですが、だからこそこうやって地域の組織が地道な活動をしているのは頼もしいです!

今年も非常に楽しいイベントでした!