世界から最も注目される日本酒のひとつとして、今日本でも人気を博している日本酒。それが『醸し人九平次』です。2018年の『美味しい日本酒ランキング』では13位でした。

愛知県名古屋市の蔵元・萬乗醸造の第15代目当主、久野九平治さんが生み出したこの逸品についてもっと知りたいと思って萬乗醸造さんに連絡をとったところ、当主の久野さんから直々にメールをくださり、萬乗醸造さんの資料と写真の使用許可をいただきました。

そこでこの記事では、人気日本酒『醸し人九平次』の3つの魅力をご紹介していきたいと思います!

1. 日本酒に美意識を求める蔵のこだわり

私は何とか、「日本酒に21世紀型の新しい光」を当ててやりたい。また、日本酒を新しいステージに立たせてやりたい。と思っております。

九平次を醸す萬乗醸造さんは、1647年に創業し、現在の当主である久野九平治さんで15代目を数える日本酒蔵さんです。昭和の高度成長の頃には、大手酒造さんの下請けとして大量工業的な経済酒中心の酒造りをされており、その脱却を1996年より図り、現在は純米大吟醸のみを醸す蔵へと変貌を遂げました。

そして、その後の尽力・個性化が受け入れられ、2016年には1200石(1升瓶で120,000本分)のお酒を造る蔵に成長しています。

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画像:醸し人九平次ファンページ

ただし、これでも蔵の長い歴史におけるピーク時に比べると1/5の製造量だそう。というのもこれは、極限までこだわったお酒しか作っていないということの表れなのだそうです。

公式サイトを見ると、15代目九平治さん(萬乗醸造では、代々当主が九平治を名乗ります)は他の蔵元とは随分変わったこだわりを日本酒に抱いているように感じます。それが次の3つです。

  • 美意識
  • 日本酒に美しさを求め、それを明文化する蔵元は、あまりいないでしょう。日本酒の美しさとは、米ができる田んぼやお米そのもの、そしてお酒ができる環境が美しいということだそうです。

  • 本質
  • 本質を突き詰めたものは「エレガント」であり、そんなエレガントなお酒を作っていきたいというのが、九平治さんの考えだそうです。「エレガントな日本酒」だなんて、九平次のウェブサイトでしか見たことがないです。

  • 先見性
  • 将来的にどんどん可能性を広げていけるようなもの・日本酒に人々はワクワクするのだという考えのもと、九平次もそのようにあろうとされています。先見性のあるお酒を作ろうということ、これは多くの方が思っているでしょうが、ここまではっきりと宣言する蔵元はなかなかいないでしょう。

このように、他とは少し違った日本酒の理想像を真摯に目指して作られているところ、そのストーリーによって、今、醸し人九平次はより注目を集めているのかもしれません。

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2. 自社社員による米づくり

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画像:黒田庄 自社田での取り組み

ワインは葡萄を自ら育てますが、今まで米は農家さんにお任せきりでした。あくまで日本酒の主原料はお米です。その息吹を知らずして皆様の信任が得られる訳もございません。これが皆様にとって、「もっと幸多き品となる」進化の近道と信じて止みません。

元々米作りから携わりたいと思われていた15代目九平治さんは、地元の農家・農協さんの協力のもと、2010年から日本酒の原料となるお米、山田錦の自家栽培をスタート。その後、アグリ九平治という農業生産のための法人をつくり、兵庫県の山田錦生産地にて3反分(約1000坪分)の田んぼを取得するまでに至りました。

米を作るのは農家さん。それを、買い上げ日本酒にする。何処かに両者に溝がありました。それを、埋めるべく自らの米作りとなりました。米を作る事により日本酒造りに落とし込める事、ビンテージなどなど今までに無い感覚を体感しております。

お米作りに関しては素人の状態から取り組んだことで、常識を疑いながらお米作りができたことを”かえってよかった”としていて、この土地で作られたお米から作られた『黒田庄にうまれて、』という銘柄も、醸し人九平次ブランドで販売するようになりました。

この黒田庄には、毎年2名の自社社員を派遣してお米を育てているそうで、その様子がFacebookページ『株式会社萬乗醸造 米作りチーム』にて公開されています。

> 株式会社萬乗醸造 米作りチーム

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3. ワインを意識した日本酒づくり

日本酒屋である私がフランスにてワインにトライする行為。それは、単なる投資・投機・M&Aでもありません。「このMIXは造り手のMIXです。」「人のMIXになります。」「人間の感覚のMIXと言っても良いかも知れません。」(中略)「私がトライし、MIXさせます」「そこに日本酒・ワイン両方の新たな形が待っていると確信しております」太古の昔から人と人が交わり、変化・進化して行った筈だからです。そして、このMIXが「日本酒・ワイン共に進化の第一歩」「中味の新たな第一歩」「醸造酒の化学反応」と、大真面目に考えております。

醸し人九平次は、獺祭と並んで海外進出に積極的なことでも有名です。このふたつの日本酒は、よく「日本酒が海外で人気である」というコンテキストで紹介されるときに、その例として取り上げられます。

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画像:ワインプロジェクト

九平次の場合はまず、フランスのパリにてその手作り感のある少量生産の味が認められ、そこからフランスでの売り込みに継続的に挑戦することになったのだそうです。

その後、2013年からスタッフをフランス研修に派遣するようになりました。彼らに現地のワインカルチャーを肌で感じてもらい、日本酒に化学反応を起こしてもらおうという気持ちで、この研修にトライしているのだそうです。そんな、派遣されたスタッフの日記は、Facebookページ『醸し人九平次/フランス日記』にて公開されていますので、気になる方はフォローしましょう。

> 醸し人九平次/フランス日記

一方、自ら赴くだけでなく、フランスの方々を日本酒蔵に招待して試飲会をしたりといった活動もされているそう。

こうした努力の甲斐あって、今ではパリの3つ星レストラン・ギィ・サボア(Restaurant Guy Savoy)にて提供されているのだとか。すごいですね。

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九平次の楽しみ方

(九平次を含むと)透明感があり華やかな酸を軸に甘味が口中に広がりますが、ミネラル感が下支えし立体感を感じます。舌の中心にエネルギーを感じる感覚が印象的。しかし最後にはリッチな余韻だけが残ります。土、水、光、風といった天地の趣をうちに秘めながらも、エレガントに仕上がっています。

このようにして最高の状態で九平次を楽しむために、萬乗醸造さんは推奨の飲み方というものをご用意されています。
例えば温度は約12℃から。食事をとりながら徐々にぬるくなる際の味の変化を楽しむのがいいとされていて、逆に冷やしすぎは味や香りを楽しめなくなるため避けた方が良いそうです。

あるいは開栓後の熟成も「劣化」ではなく「変化」であり楽しめるものであるとオススメしています。

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画像:醸し人九平次の楽しみ方

そして、お猪口ではなくワイングラスで飲むと、より香りを楽しむことができるそうです。

醸し人九平次の特徴は酸になります。酸は食材との相乗を生み出すキーになります。(中略)魚介類との相性はワインよりも優れていると考えます。それは、ワインにはほとんど含まれていない、コハク酸が日本酒には多く含まれており、そのコハク酸は魚介類由来の酸だからです。従って弊社の品の場合、酸により、お魚なら白身より脂の乗ったトロ。また肉類も淡泊な部分より脂の乗った部分になると考えます。そして体験から西洋の素材ですと、フォアグラ(ソテー)・チーズとの相性も良いです。

一緒に食べるものとしては、魚なら油の多い赤身、鳥ならもも肉がオススメとのこと。九平治さん曰く、これは醸し人九平次の酸が、食事の油を流してくれるからなのだそう。納得の理由ですね。

とはいえいろんな楽しみ方があっていいはずなので、蔵元のオススメを参考にしながら、自分なりの楽しみ方を見つけてください。

うまさけ編集部後記

言葉のすみずみから感じられる、九平治さんの日本酒に対する熱い思いにとても力がこもっている点が印象的でした。

日本酒離れが騒がれている中で、いち業界人として日本酒に振り向いてもらいたい、「日本酒って、捨てた物ではないでしょ!」と証明したい、再認識してもらいたいという強い思いのもと、積極的に「21世紀型の日本酒のあり方」を追求し続け行動している姿に感動しました。

今後の九平治さんの展開が楽しみです。

参考:
醸し人九平次 KUHEIJI | 萬乗醸造
酒泉洞堀一 ~酒と人を結ぶブログ~:九平治さんの酒スクール開講♪ 醸し人九平次へ蔵見学にいってきました。
パリの三ツ星レストランでも提供されている、愛知県を代表する銘酒「醸し人九平次」の魅力 | NOMOOO(ノモー)
醸し人九平次ファンページ