「久保田」と言えば、思い起こされるのは1980年代後半に起きた吟醸酒ブーム。

久保田こそがこの吟醸酒ブームを巻き起こした張本人であり、それ以降代表的な日本酒銘柄のひとつとして安定したお酒を提供し続けています。

ここでは、私が飲んだ久保田千寿を振り返りながら、久保田というお酒の4つの特徴を見ていこうと思います。

定番の『久保田 千寿』 食中酒として安心の味

久保田には『萬寿』『千寿』『百寿』というひと目でわかりやすくランク分けされた定番商品があります。萬寿が最高級の純米大吟醸、千寿が吟醸、そして百寿が本醸造です。

正確に言えば、さらにこの間に大吟醸の『翠寿(すいじゅ)』、純米吟醸の『紅寿(こうじゅ)』があり、そこに山廃作りの純米大吟醸『碧寿(へきじゅ)』があり、さらにさらに限定のお酒もいくつかあるんですが、色々一気に覚えるのは大変なので、まずは「久保田には【万 → 千 → 百】のランクごとのお酒がある」と覚えればいいでしょう。

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私の久保田との出会いは千寿でした。日本酒のことが好きになり始めたこと、バンクーバーの酒屋さんに久保田を見つけました。あの有名な久保田ですから、すぐに買って飲んでみました。

味にもの凄く感動したとか、そういうことはありませんでした。普通に美味しくて、安心する味。自分の中で安定してる感じがあって、これは食事が進みそうだなと感じました。

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その他の定番ラインナップである『萬寿』や『百寿』は、まだ飲めていません。どうしても萬寿は結構お値段がしますし(4合瓶で3,640円)、百寿は「本醸造」ということもあって、あまりお酒が飲めない自分としては、別のお酒に流れがち・・・。

純米吟醸好きの自分としては『紅寿』にはもの凄く興味があるのですが、まだ出会えていないので飲むことができていません。このページを執筆したのを期に、今度日本に行った時に紅寿を探してみたいと思います。見つけたらレポートします!

ではここからは、久保田を飲む上で知っておくとお酒が美味しくなる情報を4つご紹介します。

その1. 淡麗辛口の大定番!料理に合う!

久保田は、淡麗辛口で有名な新潟地酒の中でも、特にそのすっきりした味に定評があります。これはたまたまそうなったのではなく、蔵元が淡麗辛口酒を目指したからこそそこにたどり着いたのです。

朝日酒造によって久保田が作られた当時、日本では甘めのお酒が好まれていたそうです。一般的には、消費者が甘いお酒をよく飲む場合、自分たちもそのトレンドに合わせて甘いお酒を作ろうと思うところですが、朝日酒造さんがとった作戦は真逆。今後は日本人にももっと端麗のあっさりしたお酒が好まれるだろうと考え、久保田の味を整えていったのだそうです。

公式サイトで言っている「料理や季節にあわせて、冷やはもちろん、お燗をしても楽しめる久保田」という言葉は、実際に千寿を飲んだ際に抱いた感想そのまま。料理に合うし色んな温度で飲めそうな安心できるお酒。

それが久保田の目指す所なのでしょう。

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その2. 酒の品質は、酒米の品質を超えられない

朝日酒造の公式サイトには「酒の品質は、酒米の品質を超えられない」と書かれています。それだけ、日本酒づくりの家庭において米にこだわっているということでしょう。名言だ。

この言葉を裏付けるのが、1990年に立ち上げた「有限会社あさひ農研」での実験の数々です。例えばこの法人が行った実験の中に、減肥栽培があります。

減肥栽培とは、肥料を減らしてお米を栽培すること。若松屋酒店のサイトに掲載されている『「男の隠れ家」 2000年11月号』の記事によると、窒素肥料を減らしたことがお米のタンパク質を減らすことと、お米の粒の均一化に役立ったのだそうです。

タンパク質は、お米の外側のほうについていて、お酒づくりに不必要な部分。だから精米してその部分を削ってしまうわけですが、最初からそこが少ないというなら酒造りにとっては好都合ですよね。

ただし肥料を減らせば収穫量も減るため、これまでのの農業の考え方(沢山収穫がある方が良い)に反し、そこに苦労があったのだそうです。

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その3. 朝日酒造の地域密着型プロジェクト

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久保田を生産する朝日酒造さんの、自然を大切にする取り組みについてもご紹介しておきます。米や水といったシンプルな自然の恵みの影響を大きく受けるのが酒造だと思うからです。

まずはホタル生息地の保護活動。10地域のホタルの会で構成される「越路町ホタルの会」の事務局として活動を展開しています。ホタルの生息を調査したり環境整備を行いながら、象徴的な行事として毎年6月に『越路ホタルまつり』を開催しています。

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朝日酒造さんは、町内の方と共に活動する「越路もみじの会」の事務局もしています。この会の活動は、地域の新中学生に入学記念としてもみじを送ること。このもみじは、朝日酒造の社員の方が、種から苗木を育てたもので、地域の学生の「自然を誇り自然を大切にする心」を育てたいということで贈呈されているそうです。

その他、越路もみじの会創設のはるか昔の1989年には、長岡市の『もみじ園』の巴ヶ丘山荘修復に朝日酒造さんが協力。のちにこの山荘は国登録有形文化財に登録されたそうです。

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里山や水辺の研究と環境保全活動を行う『公益財団法人こしじ水と緑の会』もあります。自然保護のための助成基金や、動植物のモニタリング、河川環境の調査研究などなど、自然保護活動を行っているようで、お酒に大切なおいしい水作りの大本でこの活動が生きているようです。

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久保田だけじゃない、銘酒揃いの新潟県。蔵元の数も全国一

さて、新潟といえばお米の名産地で、だから日本酒も美味しいんじゃないかって考える人が結構いると思うんですね。私自身、日本酒に興味を持つ前は「新潟 → 魚沼産コシヒカリ美味しい → きっと日本酒も美味しい」って短絡的に考えていました。

でも実際はほんの少しだけ少し違って「新潟 → 魚沼産コシヒカリ美味しい → 良い食用米と良い酒米の特徴は別 → 酒米の王者は兵庫県の山田錦 → でも新潟にも五百五万石がある → 寒い新潟はやっぱり日本酒が美味しい」これが正解。微妙なニュアンスの違い、感じ取って頂けます?(笑)

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結局のところ、酒造りが盛んな新潟県。GetNavi特別編集版の『都道府県で覚える日本酒大図鑑』によると、新潟県の県内蔵元数は92箇所で全国一位。また、国税庁発表の資料によると、2014年に一人あたりの日本酒消費量で全国断トツNo.1なのが新潟県です。全国平均の約2.3倍消費していると聞けば、以下に新潟県民が他の県の人より日本酒を飲んでいるかがよく分かるでしょう。

そんな新潟県には他にも、『八海山』『越乃寒梅』『上善如水』『鶴齢』『〆張鶴』など日本酒界のビッグネームが連なります。基本的に辛口端麗が特徴の新潟酒。もし久保田が気に入ったら、他の新潟酒もお試ししてみてはいかがでしょうか?

参考:
千秋楽
酒蔵のある里づくり | 朝日酒造株式会社
こしじホタルの会 –