バンクーバー経済圏、正確にはバンクーバー市の隣町・リッチモンドというところに、日本酒蔵YK3 Sake Producer(以降YK3)はあります。

このYK3では『Yu』というシリーズのお酒を作っていて、地元を中心に親しまれているのですが、さて、今回はこのYuというお酒についてご紹介したいと思います!

Yuの特徴と魅力

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YK3でYuを醸すのは、杜氏を務める春日井さん。日本でサラリーマンとして会社に勤められた後、一転して長野県の酒蔵でお酒を醸す人に転身。その後滋賀県の酒蔵に移り、9年前からこのバンクーバーの地でお酒を造っていらっしゃる、異色の経歴の持ち主です。

その春日井さん。カナダに来た当初は別の会社の杜氏として別名のお酒を造っていましたが、その頃から数えてすでに9年間ものあいだ、この地で日本酒を醸しています。バンクーバーでの日本酒の認知度が、まだ今ほど高くなかった頃から造られている、パイオニアというわけです。

当然、今日までの道のりは山あり谷ありだったそうで、酒造りに通常不可欠な少なからぬ行程に対して、州や国の様々な法律がNGを出し、その度に一つずつ基準をクリアしてきました。

あるいは、酒造りに必要な機材にしても、日本とは違うこちらならではの事情に合わせて、様々なものをDIYしながら、バンクーバーのこの地でもできる地酒造りというものを形作られてきました。

例えば、日本に比べて停電が多く、停電するとなかなか復旧しないバンクーバーでは、日本で買えるような高性能な機械を導入すると、かえってお酒をダメにしてしまう、なんてリスクもあったりします。とにかくいろんなことが日本とは大違い!

そういう歴史を経て、YuとYK3は現在も進化を続けているわけです。

そんなYuでは、こだわりのカリフォルニア米とバンクーバーに流れる綺麗な水を原材料に利用しています。

お米は、アメリカのカリフォルニア州サクラメント近郊で採れる、粒の大きいカリフォルニア米を精米歩合70%に磨いて使用。また、ここBC州では標高の高い山で自然に濾過された綺麗な水が水道水から流れ、これは塩素処理も行われていないため、この水道水を蔵の濾過機で2回通したものを、お酒造りに使用しているのだそうです。

良いお米と良い水が手に入りやすい北米西海岸、やはり酒造りにとても向いている土地です。

Yuの各種銘柄

Yuシリーズには現在、5銘柄の日本酒があります。

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もっともオーソドックスなのが『Yu – junmai sake(純米酒)』です。非常に香ばしいナッツのような香りが特徴で、味も力強く、日本でよく飲む日本酒とは一線を画します。これは、バンクーバーの流通事情(あまり管理が良くない場合が多い)や、こちらの食事を考慮した上で設計された味だそう。普通の日本酒好きにはむしろ新鮮な味なんじゃないかと思います。

この純米酒と同じ製法で作られつつ、温度管理を徹底して一部の店でしか販売していないのが『Yu – junmai NAMACHOZO(純米生貯 蔵酒)』です。こちらは一転「本当に純米と同じ製法か!?」と疑ってしまうほど、甘さとすっきり感のバランスの良いお酒で、甘めの後味が個人的にはとても気に入っています。残念ながら、購入できるのはバンクーバーにあるプライベートリカーストア(政府が直営していない酒屋さん)の1店のみ!あるいは『Guu』や『Miku』といったバンクーバーの日本食レストランなどでもいただけます。

全麹仕込みで造られた『Yu – junmai all koji sake(全麹仕込み純米酒)』も、純米酒に似たテイストで、香ばしさが楽しめるお酒です。肉料理に合うとおすすめされています。

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『Yu – junmai nigori sake(純米にごり酒)』は、Yuシリーズ唯一のにごり酒。口に含むとお米の甘みとちょっとした酸味が感じられ、かすかに舌に残る渋味がいい感じです。料理にも合うでしょう。

最後に『Yu – berry sake(ベリー酒)』は、カナダの方の舌にも合うように、日本酒に地元産のブルーベリーとラズベリーを漬け込んで造ったリキュール。ソーダで割ってもいいし、そのままでも飲みやすくなっています。

杜氏の春日井さんTwitterが楽しい

実は、このページを作る際に、蔵にお邪魔して杜氏の春日井さんにお話を伺ってきました。

春日井さん、なんとひとりでこのお酒を造りながらすごいペースでTwitterなどの更新もされています。めっちゃタフ!

早朝から始まり深夜まで続く、仕込みや営業、配達などの様子を投稿しているTwitterが面白いので、ぜひフォローしてみてください!

こちらが公式アカウント。

こちらがワクワクする酒造りの裏側を覗ける、個人アカウントです!